天高しドロップゴール成功す 前島 幻水
『季のことば』
ラグビー2023W杯がフランスを舞台に佳境に入っている。南米の強豪アルゼンチンに勝ってほしいとの日本中の応援空しく、日本は惜しくも8強入りを逃した。リーグ戦2勝2敗の結果は健闘したといえそうだ。サッカーに比べてラグビー人気は今ひとつの状況が続いていたが、前回大会いらいブームは本物になった。楕円球の転がる行方は予知しがたい面白さがある。反面、ルールがサッカーより厳しく複雑なので門外漢には分かりにくい。選手の国籍は問わず当該国でプレイしていればその国の代表にもなれる。コスモポリタン世界のようで好ましい。
ラグビーの得点の一つに掲句のドロップゴール(DG)がある。通常は相手陣内にボールを持ち込み地面にタッチするトライで5点、その後与えられるコンバージョンキックでゴールポスト(GP)に入ればさらに2点。DGとは敵陣に入り込み、トライが難しいとみるや不意をついてGPに蹴り込むことだ。膠着状態を一瞬で得点に結びつけるのだから爽快この上ない。高いテクニックがいるのでそうそう成功しない。アルゼンチン戦で日本チームのレメキ選手が鮮やかにこれをやってのけた。作者が投句した後の実景だからきっと驚いたことだろう。DGはGP近くの例が多くボールの軌道は低い。「天高しの季語にはちょっとね」という声もあったが、かなり遠くの地点から蹴ったとみれば、ボールは天高く舞い上がったに違いない。
(葉 23.10.19.)
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