並び立つ案山子守旧派前衛派  玉田 春陽子

並び立つ案山子守旧派前衛派  玉田 春陽子

『この一句』

 兼題が「案山子」と聞いて少し悩んだ。最近、案山子などほとんど見たことがないからである。千葉の家の近くには田んぼが結構あるが、案山子の姿などほとんど見たことがない。あれこれ想いをめぐらしているうちに、東京深川の江戸資料館通りで毎年「かかしコンクール」が行われていることを思い出した。
 この句は、普通に田んぼに並んでいる案山子を詠んだものかも知れないが、筆者にはまるで「かかしコンクール」を詠んだ句のように思えた。この句の通り、オーソドックスで如何にも案山子らしい「守旧派」も居れば、これでも案山子と呼べるのかと思う「前衛派」も居る。江戸資料館通りを三つ目通りに突き当たって右折すると、すぐに東京都現代美術館があるので、前衛派はその影響かなどと思ってみたりもする。なかには、おきまりのピカチュウや、仮面ライダー、大谷選手の案山子などもあるが、これらは守旧派だろうか、前衛派だろうか、ちょっと首を捻ってしまう。守旧派、前衛派のほかに「おきまり派」というのも必要かもしれない。
 深川「かかしコンクール」は、今年も10月6日から10月末まで開催される予定である。ついでながら、ちょっと先の東京都現代美術館では、11月5日までディヴィッド・ホックニー展をやっていて、これがまたちょいと良さげな展覧会である。秋の深川で、守旧派、前衛派ないまぜて、アートな一日を楽しまれては如何だろうか?
(可 23.10.15.)

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