虫の音を全て消したる妻の声   須藤 光迷

虫の音を全て消したる妻の声   須藤 光迷

『合評会から』(酔吟会)

水馬 諧謔的でしかも実感のある句で、席題が出されてからの短い時間でよくこんな句を詠んだなと思いました。
春陽子 ほんとうは虫の音がすべて消えたわけではないけれど、俳句としては「消したる」と表現したのが良かったですね。
青水 「妻の声」を席題として出した当人として、こんないい句を詠んでもらって嬉しいです。
水牛 「虫の音を全て消したる」とは、詠みも詠んだりという気がします。亭主の方は静かにお酒でも飲んでいるのではないでしょうか。常ならざる俳諧趣味を感じる句です。
鷹洋 夫の声が「虫の音」に喩えられているのじゃないだろうか。
水牛 もしかしたら「虫の息」かもしれない。(笑)
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 「全て消したる」があまりにも大仰に思えて採らなかった句だが、皆さんの選評を聞いていてなるほど良い句のように思えてきた。この声はやはり尋常な大きさの声ではないだろう。しかし、「虫の音」の季語の手前、怒鳴り散らしているような声とも思えない。台所にゴキブリかネズミを見つけて、「キャーッ」とか「ワアーッ」とか叫んだのかもしれない。それなら「全て消したる」もあながち大袈裟ではない。(可 23.09.21.)

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