球場に深々と礼夏の果 金田 青水
『この一句』
高校球児の熱い戦いが甲子園で繰り広げられている。コロナの影響で、2020年夏は地方大会も含め中止になったが、翌21年以降はいくつかの制限つきながら開催され、第105回の今年は様々な制限が緩和され、コロナ前に戻った。さらに暑さ対策として5回終了後に選手が10分間の休憩をとる「クーリングタイム」が導入された。季語にはなっていないが、夏の高校野球は今や風物詩だ。
掲句は、高校野球とは一言も触れてない。ただ単に野球場に丁寧なお辞儀をした、と言っているだけだ。ところが、「夏の果」というやや感傷的な季語によって、この句の主語は高校球児だと想像がつく。しかも、敗者とみた方がしっくりくる。高校野球の全国大会が始まると直ぐ立秋なので、夏の果の敗者は地方大会のチームだろう。今年は、全国の3486チームが参加したという。内、甲子園出場校は49校。このコラムの大半の読者の母校も地方大会で涙を飲んだことだろう。
汗まみれ泥まみれで白球を追う、全国の球児たち。その一球一打に熱い思いを託し、憧れの甲子園という晴れ舞台を夢見たものの、武運つたなく敗れ去った3400余りのチームへ、作者は暖かな拍手を送っている。
(双 23.08.20.)
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