夏終わる河原に子らの炊事あと 徳永 木葉
『合評会から』(番町喜楽会)
迷哲 子供たちが河原で飯盒炊爨をしたあとでしょうか。景がよく見えて、「夏終わる」の季語にふさわしい句です。
水牛 「河原の炊事あと」と「夏終る」の取合せがいいですね。
双歩 浜辺に残る丸太の燃えかす、河原の焦げ跡などは、夏の終わりの象徴としてよくある題材です。叙述が巧みでリアリティがあります。
水馬 炊事の後始末の悪さで近所に迷惑を掛けているというニュースを見ました。
迷哲 最近のキャンプ場には竈が拵えられていて、河原で炊事をさせない傾向があります。
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夏のキャンプ場でよく見る光景で「夏の果」の兼題にふさわしい句だと思ったが、水馬・迷哲両氏のやりとりを聞いていて、なるほど最近のキャンプ場では人工の竈でしか煮炊きできないのかと思った。河原の石の上で火を起こし、地面にY字型の枝をさし、横に渡した枝に飯盒を吊るしてこそ醍醐味があるのにと残念に思った。なにかよくないことが起こるたびに、してはいけないことが増える。そのことによって確かに世の中は「安全・安心」になるのかもしれないが、その分面白さが遠ざかり、つまらない世の中になるという側面もある。
今を詠んだ句だと思ったが、すでに失われた時を詠んだ句か、と思うにいたった。「夏終わる」とは、季節の移りだけではなく、時代の移りのメタファーでもあるのかもしれない。
(可 23.08.16.)
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