風呂敷の真結び固き大西瓜    谷川 水馬

風呂敷の真結び固き大西瓜    谷川 水馬

『この一句』

 西瓜は秋の季語とされているが、7月が出荷の最盛期なので夏の果物の主役というイメージが強い。90%は水分だが、栄養価は高く、果糖など糖質のほかビタミン、ミネラル類を多く含んでいる。暑い日に井戸で冷やした大きな西瓜を割り、家族みんなで食べた情景は、昭和の記憶でもある。最近は家族の人数が減り、大玉西瓜を持て余す家庭が多いという。スーパーには冷蔵庫で冷やせる小玉西瓜や、大小に切り分けたカット西瓜が並んでいる。
 掲句は西瓜と風呂敷を詠むことで、昭和の家庭をよみがえらせる。西瓜は丸くて重い。Мサイズで5~6キロ、Łサイズの大きなものは10キロ前後ある。八百屋で買うとビニールを編んだネットに入れてくれたが、家庭では風呂敷を使って持ち運びした。風呂敷に包まれた西瓜は到来物であろうか。「真結び固き」の表現にリアリティーがある。運ぶ時に結び目が緩んで西瓜が転がり出ないよう、真結びにしてあるのである。
 作者は鹿児島生まれの鹿児島育ち。句会での解説によれば、幼い頃に叔父さんが風呂敷包みの西瓜をよく持ってきてくれた思い出という。入道雲の湧く暑い日に、固い結び目を解き、大きな西瓜を抱えて井戸に走る水馬少年の姿が浮かんでくる。
(迷 23.08.14.)

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