穴場とはビルの隙間か大花火   廣田 可升

穴場とはビルの隙間か大花火   廣田 可升

『合評会から』(酔吟会)  

三薬 今年四年ぶりに隅田川の花火が復活しますが、橋の上なんかは人が多くて大変です。この句はいいところに目をつけました。
てる夫 ビルの谷間で花火を見る、ちょっと斜に構えたところがあっていいですね。
春陽子 娘の友達が淺草にいて、こういう話を聞いたことがあります。隅田川の花火ならではのあるある話ですね。
水馬 私は「隙間」ではなく「谷間」だと思って採ったのですが、モダンな東京の句ですね。
而云 こんな場所で花火を見ることは、実際にはないのじゃないかな?
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 作者によると、「隅田川花火は蔵前橋などあまりにも人が多くて近寄りがたく、本所あたりのビルの隙間から見る方が楽でいいなと思っています」ということで、もっぱらそうしているという。
 私も同じような経験をした。横浜・みなとみらい地区は花火の名所だが、有料観覧席以外はビルが邪魔してしまう。土地勘のある人に「穴場だよ」と言われて連れて行かれ、着いてみたらなんとビルとビルの隙間だった。しかしビルの間から見る花火には、なんとなくうら悲しさが漂う。この句はそんな寂しさと、一寸うさん臭さを感じさせて面白い。私も近頃は可升流にちょっと離れて自宅のバルコニーでビールを飲みながら港の花火を眺めている。
(水 23.08.01.)

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