双牛の代掻き成るや田の肥ゆる 高井 百子
『この一句』
なんの前触れもなくこの句を読むと多々疑問が沸く。季語は「代掻き」、田の底を掻く作業をあらわす初夏の季語である。一つ目は、いまでも牛に代掻きをさせる地域があるのだろうか、という疑問。二つ目は、しかも「双牛」というのだから、牛を二頭連ねて代掻きをするということである。南西諸島のどこかだろうか、あるいは、田植神事の一齣だろうかなどと考えてしまう。
この句の「双牛」とは、このコラムが掲載されているホームページの運営母体である「NPO法人双牛舎」の創設者であり、現在も共同代表である大澤水紀雄、今泉恂之介両氏のことである。双牛舎は平成19(2007)年4月に、俳句専門機関として、初めてNPO法人の認証を受けた団体である。両氏ともに昭和12(1937)年の丑年生まれであることから、法人名は「双牛舎」とされた。しかも、両氏はともに上智大独文卒、日経新聞OBという切っても切れない間柄である。
この句は、令和5年6月10日、コロナ禍が明けて4年ぶりに開催された双牛舎俳句大会に寄せられたもので、「代掻き」に仮託して、両氏の積年の功労に敬意と感謝の意を表した挨拶句である。たまたま、この日の大会では両氏ともに群を抜く高得点で「天」をとられた。まことに、慶賀の至りというほかない。
(可 23.06.18.)
この記事へのコメント