あの人もあの人もいた蛍の夜 星川 水兎
『合評会から』(番町喜楽会)
百子 「あの人も」のリフレインに思い出の濃さを感じます。蛍吟行をした時にはお元気だったのに、その後亡くなられた方のお名前が具体的に浮かびます。
迷哲 蛍のはかない光には死のイメージがつきまといます。蛍狩りのことを思い浮かべて、しみじみと詠まれた句です。
春陽子 アルバムを開いているのでしょうか。「あの人も」のリフレインが効果的です。
而云 蛍の記憶と言えばやはり青木村吟行です。「あの人もこの人も」ではなく、やはり「あの人もあの人も」なんだとしみじみ思います。
青水 心に深く残る夕闇の風景を巧みに詠んだ句です。推敲を重ねた句だと思います。
双歩 当時一緒に蛍を見た句友が次々に他界してしまった。口調からすれば「あの人もこの人も」でしょうか。
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「蛍の夜」は2016年6月、信州青木村蛍吟行の夜である。十七名の参加者のうち、お二人が亡くなられている。最初この句を読んだ時に、双歩さん同様、「あの人もあの人も」は口調が悪いように思われた。しかし、何度か読み返してみると、その口調の悪さに、作者の故人に対する思いの深さが、かえって表れているように思えた。
闇に光る蛍には、どこか死者や魂のイメージがつきまとう。この句を読むと、あの湧き上がるような蛍の群れと、亡くなられたお二人の笑顔が眼裏に浮かんでくる。
(可 23.06.09.)
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