蹴つまづく我を笑ふか踊子草   大澤 水牛

蹴つまづく我を笑ふか踊子草   大澤 水牛

『この一句』

 踊子草は田んぼの畦道や住宅地の道端に群生する。まだ寒い春先から田植えのころまで、縮れた卵型の葉に淡紅色の花がつく。花の形が笠をかぶった踊り子ように見えるところからオドリコソウと名付けられた。
 世界に五十種ほど、日本にも五種あるという。植物図鑑をいろいろ繰ってみたが、作者の転ぶところを目撃した踊子草がどこの何種のものか、日本古来のものか、特定しにくかった。
 私の生活圏である長野県上田市に限ってみれば、踊子草は茎短く唇形花をつける。遠目にはそこに絨毯があるかのように思える。そうだとすれば、密生した踊子草につま先を取られて転倒するというのは、ありそうな話だし、高齢者には危険極まりない出来事となる。
 そうではなくて踊子草を傍観者に見立て、笑い噺風に仕あげたとすれば、作者の狙い通り、俳諧味たっぷりということになろう。
(て 23.05.16.)

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