癌とりし喉につるりと冷奴 谷川 水馬
『合評会から』(番町喜楽会)
幻水 この句は作者が想像できるんですが…。まぁそれに関係なく、冷奴を上手く表現しているなぁと思います。
迷哲 辛く重い体験があったと思うのですが、そんなご自分の体験を句に詠む精神力がすごいなぁと思いました。
而云 これはもう体験者にはかなわないなぁ。我々も冷奴は「つるり」という感じがするのだけれども、体験者にはそれが切実に感じるのでしょうね。
水牛 冷奴の喉越しの良さを、厳しい体験を経た後の「つるり」と表現している。感心しました。
斗詩子 辛い手術を無事に終えた後、そろりと口にした冷奴の喉越し、格別な味だったでしょう。ほっとした静かな喜びが感じられます。
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作者の弁「手術から五年たちました。寛解と言われてます。今は喉に何の違和感も残っておらず、冷奴がつるりと喉を過ぎていきます。兼題に「冷奴」が出たときから、この感覚を絶対に句に作りたいと思いました。病を得たときは本当につらかった…。けれど今は大丈夫です。ありがとうございます」。これ以上付け加えるべきことは無い。病の句でありながらこの句は明るさを感じる。何と言っても「つるりと冷奴」が効いている。
(水 23.05.11.)
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