干し若布縺れをほどく風のあり  今泉 而云

干し若布縺れをほどく風のあり  今泉 而云

『合評会から』(日経俳句会)

方円 干若布の絡まっているのが、ほどけるほどの強風。そういうのが本当にあるかどうかは別にして、いかにも春という感じでいいかなと。
健史 下五の風格。客観、達観の境地です。
明生 縺れている若布、緩やかな風がそっと縺れをほどいた。まさに一瞬の出来事を細かいところまでとらえた上手な句だと思いました。
操 浜辺に干された若布に心地よい風が吹く。優しい陽の光、穏やかな景色。
阿猿 縺れをほどくのは優しい風でしょう。何気ないけれどずっと見ていたい、のどかな浜辺の春の景色です。
弥生 穏やかな春の海岸風景、そして人々の暮らしまで見えてきます。若布に空気を運ぶ心地よい風がリアルに感じられます。
定利 縺れをほどくが上手。
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 作者によると葉山海岸の嘱目だという。私も葉山に知辺がありしょっちゅう行くものだから、この「若布干し」も馴染みの景色である。二月初めに若布採りの解禁日があって、浜辺が戦場のようになる。大釜に湯がぐらぐら煮え立ち、若布舟から揚げられた若布がぶち込まれる。黒褐色の若布が熱湯に入れられるや、瞬時に鮮やかな緑色になる。茹上がった若布はオバアサン、おばさん、娘さんたちが手際よく干し綱に掛けて行く。からまろうが真っ直ぐだろうが、浜のバアチャンたちは全く無関心のように見える。まさに風まかせである。
(水 23.04.25.)

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