増え続く空き家どうする猫の恋 須藤 光迷
『合評会から』(日経俳句会)
てる夫 高齢者がたくさん住んでいる地域にいるので、空き家は切実な問題です。最近も近所で二軒ほどお年寄りが亡くなって空き家になった。
水牛 横浜市営地下鉄の奥の方は、昔は「金曜の妻たち」の舞台になったりした人気の住宅地でしたが、今は空き家だらけで社会問題になっている。時々散歩に行くが、そんな空き家と猫の恋をよく取り合わせたものです。時事俳句の感じもあり、面白い。
静舟 またしゃくにさわる猫の恋の季節です。空き家が増えて猫ちゃんたちはますます自由恋愛華やかに。
弥生 シビアな問題を季語が一蹴する面白さがあります。
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選者の評の通り、読者がどこに住んでいるかに拘らず、一様に空き家を身近に感じているのがよく分かる。筆者もまた然り。どういう事情かわからないが、散歩の途中に庭の雑草が伸び放題の閉めきった家が目に付く。時に春。そういう空き家の庭は恋猫の格好の土俵だ。うなり声やバトル中の咆哮など、辺りはばからず春眠を破られること再三だ。
深刻な社会問題を「猫の恋」がさらりと躱し、まあ眉根の皺を解いて落ち着いて考えましょう、とでも言っているようだ。折から大河ドラマは「どうする家康」だし。
(双 23.03.09.)
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