松過ぎて犀川彩る加賀友禅 吉田 正義
『この一句』
「犀川」という河川は本州に複数(ある資料によれば七河川以上)存在する。中でも広く知られているのが長野県北部を流れ、千曲川と合流する犀川。続いて石川県金沢平野の中央部を行く二級河川の犀川。こちらは金沢市の北部を水源とし、市内を流れて日本海にそそぐが、特に冬季の、加賀友禅流しで広く知られるようになったという。
友禅は京都に生まれた染色技術だった。元来の技法は江戸時代の京都の扇絵師・友禅の絵に由来し、その画風を着物の文様に応用したとされる。京都の絵師によって友禅の技法が完成後、友禅の技法が加賀藩の金沢に持ち込まれ、独自の発展を遂げて「加賀友禅」となり、現在は金沢の冬の犀川を彩る風物詩として知られるようになった。
掲句の作者はこじんまりした商社の経営者である。旅好きで、商売がらみに関わらず国内あちこちへの旅を続けているようだ。句会で特に中部地方、関西地方などを詠んだ句が出てくると、タイミングよく「このあたりはねぇ」「あの寺はねぇ」と蘊蓄を披瀝する。掲句の場合も、犀川や京都友禅と加賀友禅の関係などを、適切に説明していた。
(恂 23.02.07.)
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