左義長の残り火で焼く蜜柑かな 中嶋 阿猿
『季のことば』
「水牛歳時記」によると、「左義長(さぎちょう)」は、小正月の日に行う一種の火祭りで「どんど」や「どんど祭り」などとも呼ばれる。元旦に降臨した神様を、正月飾りを焚いて、その炎と煙と共に天に送り返す儀式だという。燃え上がる火は神聖なもので、その熱気や煙を浴びたり、その火であぶった餅や団子を食べればれば一年間の無病息災が保証され、書初をどんどの火にくべると「手が上がる」という。地方によって呼び方が違うが、全国各地で催されている新年の行事だ。
筆者は、日本三大火祭りとも言われている長野県野沢温泉の道祖神祭りを見学したことがある。高さ十数メートル、八メートル四方の社殿を組み、それに村人が火を付けようとするのを厄年の村民が防火役となって争う。激しい攻防戦の末、双方の手締めで社殿に火が放たれ、紅蓮の炎とともに社殿が崩れ落ちるという勇壮な火祭りだ。
閑話休題、句会では餅を焼いたり焼き芋を詠んだ句に交じって、焼き蜜柑の掲句が目についた。蜜柑を焼くと甘みが増す。「子供のころ、焚き火をした後に蜜柑を入れた。あれ結構美味しいんですよね。句を見て思い出した」と方円さん。ネットには、焼き蜜柑のレシピがたくさんアップされている。焼き蜜柑は栄養価の高い外皮まで食べやすくなることなどから、若い人にも人気があるようだ。外皮には、発がん予防、骨粗鬆症予防、美肌などの健康成分が含まれているという。うーむ、焼き蜜柑が食べたくなった。
(双 23.02.01.)
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