銀舎利を黄金に染めて寒卵    嵐田 双歩

銀舎利を黄金に染めて寒卵    嵐田 双歩

『この一句』

 まずは掲句を賞賛、納得しきりの言葉から紹介しよう。「コース料理の最後にTKGが出てきたのにはびっくりした。銀舎利という懐かしい言葉が郷愁を誘い、季語の『寒卵』はぴったり」(木葉)、「刺身の後にカツサンドやシチューが出るなど、料理は意表を突くものばかり。〆の卵かけご飯も完食した」(迷哲)などなどである。
 正月七日、新宿御苑前に集合し、神楽坂までという山ノ手七福神吟行があった。花園神社の裏に回り、ゴールデン街を掠めラブホテル街を抜けという非日常の体験をしつつトコトコ。この一句の舞台となったのは、居酒屋での打ち上げ風景。天候に恵まれ、久し振りの散策に励んだせいの心地よさもあってか、一同和気藹々とした会食だった。
 質量ともに大好評の料理で、とりわけ話題が集中したのが、最後の卵掛け御飯。卵を割ると、幾分オレンジ色を帯びた黄身が盛り上がり、光り輝いていた。多分、鶏舎でなく放し飼いで、それなりの餌を与えられたものではないか。食べ切れずに卵を持ち帰る人を見つつ、「唐土の鳥が…」という七種の囃し言葉を思い出したりもした。
(光 23.01.19.)

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