故人(なきひと)の顔一つずつ除夜の鐘 石黒賢一

故人(なきひと)の顔一つずつ除夜の鐘 石黒賢一

『合評会から』(三四郎句会から)

諭 除夜の鐘を聞きながら、故人を一人ずつ偲んでいるのですね。
雅博 除夜の鐘を聴く人に共通する心情を、上手に表していると思う。
正義 その通りですね。一人一人が、それぞれに成仏されているのでしょう。
而云 鐘の音一つ聞くごとに、亡き人一人ずつの顔が浮かんでくる。省略が効いています。
豊生 我もまた鐘の一つに・・・。いざ、晩節を正しく、清く、と思っております。
          *       *       *
 大晦日の夜の日付が変わる頃、近くの寺院の撞く除夜の鐘が「ゴーン、ゴーン」と聞こえてくる。この鐘の音は、人の心にある百八の煩悩を祓うため、と言われている。さて合評会で、掲句について「皆さん、語り終えたかな」と思った時のこと。最年長の豊生氏が、至極真面目な表情で、上記のことを話し出した。著名な仏教寺院で修行の経験を持つ方だが、その真剣な表情を見て、句会の全員が粛然とせざるを得なかった。
(恂 22.12.30.)

この記事へのコメント

  • 酒呑堂

    2022年12月30日 18:13
  • 酒呑堂

    「故人」と書いて「なきひと」と読ませるためのルビを振るのは、下手な演歌作詞家がよくやる手で、字数合わせと自分の思いを両立せしめようという安直なやり方です。この句などは「亡き人の顔一つずつ除夜の鐘」でしみじみとしたとても良い句のなるのに、わざわざ“小細工”したことが惜しまれます。
    2022年12月30日 18:20