右膝が冬の初めを報せをり    向井 愉里

右膝が冬の初めを報せをり    向井 愉里

『合評会から』(酔吟会)

双歩 年寄りの句会だとついついこういう句を採ってしまいますね。俳句甲子園には絶対に出て来ません(爆笑)。詠み方がうまいですね。
鷹洋 私の場合は右膝ではなく、左膝です。他人事ではなく、同情票ならぬ同調票を投じました。
水牛 私の場合は、左膝が五回痛むと、右膝が一回といった感じで・・。この句は、自分のことを詠んでもらった気がします。身につまされる句です。
三薬 なぜ右膝なのかよくわかりませんが、右でも左でもいいやと思って採りました(笑)。
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 じつに上手な句だと思った。こういう句を詠もうとすると、ついつい「右膝の痛み」と詠みたくなる。あるいは「古傷の痛む」などとも詠みたくなる。ところが、この句には「痛み」も「古傷」も出て来ずに、そのような事情を読み手に了解させている。しかも「冬の初めを報せおり」である。句の主語は間違いなく「右膝」なのだが、句意の主は「冬の到来」であり、きちんと季語が立っている。
 作者が膝痛にいちばん縁のなさそうな愉里さんだと知り驚いた。「さほどでもないのですが・・・」と言いつつ、句会の開かれる芭蕉記念館への道すがら浮かんだ句だという。直前まで粘った甲斐がありました。
(可 22.12.01.)

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