子らも来て妻の傘寿の菊の宴   前島 幻水

子らも来て妻の傘寿の菊の宴   前島 幻水

『合評会から』(番町喜楽会)

白山 こんなにめでたい日はないですね。僕には孫もいないから羨ましいなあとか、ちょっと寂しいなあとかの感情が浮かびます。
水馬 「妻の傘寿の菊の宴」の「の」の畳みかけるような使い方のリズムがお上手だなと思いました。妻や家族に対する愛情があふれています。
愉里 おめでとうございます。お孫さんも集まられたことでしょう。「菊」がしっくりと皆様の品を感じさせます。
双歩 誠におめでとうございます。花期の長い菊がよく似合います。
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 めでたい、めでたいと、お祝いの言葉がやんやと投げかけられた一句である。それはそうだ。苦労も喜びもともにしてきた妻八十歳、そのお祝いにと集った子や孫。にぎやかな会食になった作者の喜びがあふれる。ドイツ出身と聞く作者の奥様が、日本生活にどっぷり溶け込んでいる様子まで垣間見ることができる。傘寿という日本の祝い事に身をゆだねている様子は嬉しい。めでたいという他ない気持ちの良い句になった。
 作者の弁を聞くと、「ただ単に秋の宴会だから、季語として菊を持ってきただけです。家内の誕生日は、ちょうど皆さんが信州蕎麦吟行に行かれていた日です。吟行に行けなくて残念でした」。それに対して「いや当然だ。奥さんの誕生日をすっぽかして吟行に行ったら一生恨まれる」と会場が爆笑になったのを付け加えておこう。
(葉 22.11.25.)

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