善き人の往き交う句会秋闌ける  堤 てる夫

善き人の往き交う句会秋闌ける  堤 てる夫

『この一句』

 句会をテーマにした俳句である。俳句は座の文学といわれるが、この一句からは、句会に集った人々が句友の句に共感し、あるいは対象の捉え方や表現、解釈をめぐって談論風発しという、和気藹々とした光景が想像される。しかも季語は「秋闌ける」つまり秋の深まったころとなっており、しみじみとした情感の高まりも覚える。
 ところで、この句には前書きが付いていた。「二百回例会に寄せて」と。月例会とすれば、すでに十七年を数え、十八年目も目前である。合評会では「善き人は誰?」という問いが出、作者から「亡くなった人も…」という説明も。鬼籍に入った人もいれば、体調を崩した人もいて不思議はない。だが、一期一会を心に、句会は続く。
 俳句のいいところは肩書、すなわち会社など俗世間の組織の上下関係にとらわれず、座を共にできることだ。しかし、コロナウイルスの蔓延により、郵便や電子メールへの切り替えを余儀なくされたこともあった。この一句には、そういう事態を乗り越え、対面の句会がかなった喜びも含まれている。俳句を絆に心豊かな日々を送りたい。
(光 22.11.11.)

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