ちよいと出て秋澄む街にモンブラン 金田青水
『この一句』
「モンブラン」とはモンブランケーキのことだ。形がアルプス山脈の最高峰モンブランに似ているのでそう呼ばれている。もともとはイタリアの家庭菓子だったのを、フランスの老舗カフェがデザートとして供していたそうだ。日本には自由が丘の洋菓子店「モンブラン」が持ち帰りできるケーキとして売り出し、やがて全国に広まったという。今やショートケーキと並ぶケーキ屋さんの看板メニューだ。
その「モンブラン」は栗のクリームを使うので、栗が出回る今ごろが旬といえるかもしれない。少なくとも、作者にはその辺の事情が計算に入っていると思う。健康に良いのと句材探しを兼ねて、散歩を日課にしている句友は多い。作者もご多分に洩れず、あちこち歩き回っていると聞く。秋の田園風景をじっくり堪能した後は「ちょいと」駅前に出て、しゃれたカフェで一休み。「そうだこの時季はモンブランだ」とばかり熱い紅茶とともにフォークを口に運んだに違いない。一読、作者の気持ち良さそうな気分が伝わる一句だ。
ところで、作者は句会に掲句のほかに「十月のどんぐり無造作に踏み割る」などの定型を外す作品を出句した。掲句も定型とはいえ、詠み方が独特だ。個性的な句に出会うのは句会の醍醐味。これからも作者がどんな刺激的な句を作るのか、楽しみでもある。
(双 22.11.10.)
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金田 青水