十月の果実に我が身甘やかす 大下 明古
『合評会から』(日経俳句会)
健史 秋の恵みが次から次へと浮かんできます。「甘やかす」から果実の甘さを連想します。
青水 糖尿病なんてクソ喰らえって言うくらい、私自身の実感。下五の「甘やかす」が秀逸。
双歩 十月は果物が豊富ですよね。ついついあれもこれもと手が出て、なんとなく甘やかしそうだな。
芳之 美味しい、いや上手い句だと感じました。
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桃、梨、葡萄、栗、柿、林檎、青蜜柑、無花果、石榴。さらに、柚子や檸檬なども加えると季語になっている秋の果実は枚挙にいとまが無い。どれも個性的な味で、彩りも豊か。正に実りの秋の面目躍如だ。
では、作者の目の前にはどんな果実があるのだろうか。桃や梨などは概ね盛りを終え、十月に店頭を賑わせているのは、柿、林檎、葡萄、蜜柑、栗、無花果などだが、果たして作者の好物はどれか。などと想像はふくらむが、上五の「十月の」からは、ある日一日の景というよりも、十月という長いスパンの食卓のことと推察される。「軽み」の句風が魅力的な作者だけに、果糖の取り過ぎはよくないと知りつつも「旬の味覚には逆らえない」、という開き直り宣言が微笑ましい。
(双 22.11.05.)
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