黄落の一葉拾いつ墓地探し   藤野 十三妹

黄落の一葉拾いつ墓地探し   藤野 十三妹

『この一句』

 落葉降る墓苑を歩いているのだろうか。作者は、梅雨時六月に.掛替えのない伴侶を失った人であった。コロナ籠り、句会で対面する機会もなく、お悔やみの一言も申し上げていなかった。恐るおそる携帯電話を取り上げた。電話の第一声は、はきはきと「うわあ、声が聞けて嬉しい」と明るかった。
 でも語る近況は暗かった。亡くなったご主人の銀行口座は相続の手続きが済んでいないので封鎖され、親戚に支援を頼んでいるという。納骨も手がついていない。「涙をふく間もありません」とこぼした。それでは墓所探しも急いで具体化できそうにあるまい。気分転換の散歩替わりだったのだろうか。
 夫婦二人きりのスイートホームも老老介護の年代になると、大所帯が羨ましくなる。いざという時、頼りになるのはやはり家族、親族だ。作者は今や天涯孤独、黄落の一葉だろうか。早く元気を取り戻し、心身健康な日々を取り戻すように願わずにいられない。「黄落の句」とともに、作者が同じ句会に出したのは「独り身の骨を噛むよな秋時雨」の一句。
 どうか句作にも精を出してください。
(てる夫 22.11.04.)

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