十月や夢百歳へ十五年 岡田 鷹洋
『この一句』
作者はこの十月、八十路半ばの誕生日を迎えた。その感慨が百歳まで生きようという決意だったのである。その意気や良し、である。齢八十に到達すると、折に触れて人生の終わり方に思いが向く。あと何年生きられるかとか、五年か十年か、いや十年ももつかなあ、とか。それが作者は十五年という設計図を描いたのである。心身健康で大きな故障もない。気宇壮大である。
現役時代、新聞社の記者だった。一九七六年~七九年の三年間、北京駐在の特派員。中国は「四人組」の混乱から抜け出て華国鋒体制が鄧小平体制へと向かい、日中経済関係の興隆期であった。日々、忙しい思いをされただろうし、両国関係への気遣いもあったっただろう。
句会に参加され、驚かされたのは、毎週一回、川口市の夜間中学に通い、中国人のための日本語教室で教壇に立っていると知らされた時。もう七年も続いているという。若き日の血潮が今もたぎっている人である。
令和三年度の日経俳句会賞の英尾賞に輝いた一年ほど前のこと「句作十年、新境地を目指します」とあいさつされた。「オカチャン、畏るべし」である。
(てる夫 22.10.25.)
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