うそつくな閻魔の声や秋暑し 岩田 三代
『合評会から』(日経俳句会等々力渓谷・九品仏吟行)
三薬 現代的というか、商売上手というか、九品仏の声をだす閻魔大王。嘘を言い尽くした我ら老輩より、若い孫たちを連れてきたい。季語もぴったり。
光迷 改築された浄真寺の閻魔堂。お賽銭をあげると訓戒を垂れ始めるといういかにもAI時代にふさわしい仕掛け。訓戒にも何種類かあるようで……。
水馬 喋る閻魔様。季語と合っていると思います。
春陽子 賽銭を入れると「嘘つくな〜嘘は~」と声を出していた。からくり閻魔を一句に。目の付け所に一点。季語の選択もぴったり。
木葉 閻魔堂の外まで大音声が聞こえて来た。永田町と霞が関にこの「嘘つくな~」の閻魔堂を置いて欲しいものだ。
愉里 子供の頃はもっと身近に感じていた閻魔様。大人になって、すっかり遠ざけてしまっていました。
* * *
世田谷の名刹九品仏浄真寺は戦国時代の吉良氏の奥沢城が廃城になっていたのを利用し延宝6年(1678年)珂碩上人が開山した。徳川幕府が幕藩体制を完全に固めた4代将軍家綱の時代で、実際には不要だったが“万全の備え”として江戸の南西の固めに築いた豪壮な寺である。広壮な寺内には桜、紅葉が春秋を彩り、上品・中品・下品それぞれ三体、計九体の巨大な阿弥陀如来を祀る御堂がある。山門をくぐると間もなくある閻魔堂は数年前建て替えられたものだが、それを機に賽銭が放り込まれると閻魔大王ががなり出す仕掛けをほどこした。商売っ気丸出しであるところが面白い。 (水 22.10.06.)
この記事へのコメント