日時計の影に気付きし九月かな  今泉 而云

日時計の影に気付きし九月かな  今泉 而云

『合評会から』(番町喜楽会)

白山 いいところに目を付けましたね。確かに九月は影が伸びてきますよね。そんなところに気が付いたところがすごいなぁと思いました。
双歩 少し涼しくなった九月は、日時計に目をやる余裕が出て来たのでしょう。九月らしい句です。
愉里 八月より、影がやわらいで見えたのでしょうね。そんなところに惹かれました。
迷哲 九月は、残暑がぶり返したり安定しない日が続くものですが、この人は陽が傾くことに秋を発見したのですね。その気づきを評価しました。
光迷 やっと九月になって朝顔が咲き、散歩にも少しずつ出られるようになりました。作者もどこかの日時計に秋を発見したのでしょう。
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 名句には発見がある。ある俳人は「俳句に盛り込む発見とは、珍しい事柄ではなく、むしろ、見慣れ聞き慣れているものが示す新鮮な断面の発見である」という。掲句も正にそうだ。真夏は太陽が真上にあり、日時計の影も短く気にも留めなかったが、九月に入って、ふと影の存在に気付いた、という繊細な感覚がもたらした発見が魅力的。
 付け加えれば、「○○を発見した」とか「○○に気づいた」などと詠むことは少なく、発見内容を具体的な描写など別の表現で示すことが多いと思うが、「影そのものに気付いた」とストレートに詠んだ例は少ないのではないか。そういう意味でも記憶に残る一句だ。
(双 22.09.16.)

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