ぬか床の漬かりの早き土用かな  中村 迷哲

ぬか床の漬かりの早き土用かな  中村 迷哲

『合評会から』(酔吟会)

てる夫 周囲にはぬか床を漬ける人は沢山いるのですが、私自身はプロセスをよく知りません。温度が高いと漬かりも早いのだろうと想像して頂きました。
水馬 すごくあたりまえのことをわかりやく詠んだ句ですね。即興で詠んだような感じがしますが、含蓄のある句だと思いました。
百子 たしかに暑いと漬かりが早くて、とても実感のある句です。
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 我が家で糠味噌漬けを好んで食べるのは私だけ。家内も息子も食べない。従っていつの間にか「食べたい人が漬ける」ということになって、毎日自分でぬか床をかき混ぜている。だからこの句を選句表で見つけるなり「我が意を得たり」と◎を漬けた。しかしこの句の作者は幸せだ。「女房が漬けているのですが、この頃は午後三時くらいに漬けたら、夕方にはもう漬かり上がっているようです」などと暢気なことを言っている。
 それにしても糠漬という日本独特の漬物はなんと素晴らしい発酵食品であることか。春夏秋冬、その時々の野菜をこよなく旨くしてくれる。浅漬ならば野菜の味わいを活かし、発酵糠のほんのりとした香りと塩味であっさりとしている。古漬けともなればまた格別。胡瓜、茄子、大根、キャベツ、人参など、細かく刻んで生姜の絞り汁を一垂らし、鰹節をぱらりと掛けて七味唐辛子と醤油をちょっぴり、これと冷奴で湯上がりの一杯は「よくぞ日本に生まれたる」である。
(水 22.08.28.)

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