足元にふるさと見ゆる夏の山 後藤 尚弘
『合評会から』(三四郎句会)
進 ふるさとが足元に見えるとは。素晴らしいことですね。
有弘 故郷を見下ろすと言う視点が面白い。
而云 車での峠越えか、登山かな。足下に見える故郷。両親は ご健在でしょうか。
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掲句を見て反射的に、米国の民謡「峠の我が家」を思った。ところが後で調べたら、この歌の原題「Home on the Range」の「Range」の意味は「峠」ではなく「平原」だという。つまり歌の本意は「平原から遥かに眺めた故郷」なのだ。とは言え、私の心に描く句の要は「足下の」にあり、それこそが山国に住む日本人の「故郷」だと思うことにした。
登山やハイキングなどで高所に上り、下界を見下ろすと、はるか遠くに小さな集落が見えることがある。都会に住む者は「ああ、あんな所に」と思い、「都会に出て行くのはたいへんだろう」などと同情するが、自分の故郷が「あんな所にあれば」という憧れも生まれる。「足元にふるさと見ゆる」—-。日本人の多くが、何らかの思いを描くフレーズだと思う。
(恂 22.07.11.)
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