ピンポン玉ほどのニュートン青林檎 今泉而云

ピンポン玉ほどのニュートン青林檎 今泉而云

『この一句』

 吟行で小石川植物園に行った際の句である。このニュートンの林檎の木は、1964年にイギリスから贈られたものであったが、輸入時にはウイルスに感染しており、普通なら焼却処分されるべきところを、文化遺産であることから隔離栽培され、ようやく1981年に公開されることになったものだと、小石川植物園の親元である東京大学のサイトで説明されている。
 西洋には、林檎にまつわる話がたくさんあるような気がする。もっとも有名なのは、アダムとイヴの禁断の果実で異存はないだろう。二番目がこのニュートンの逸話かと思うが、最近ではパソコンやスマホについている、あの齧られた林檎のマークかも知れない。また、ウィリアム・テルが息子の頭に林檎を乗せて矢で射抜くシーンも想起される。他にも、トロイア戦争にも、グリム童話にも、カフカの『変身』にも林檎が登場すると、これは最近読んだ本で知った。西洋人にとっての林檎には、われわれ東洋人の預かり知らない象徴性があるのに違いない。
 掲句は「ニュートンの青林檎」を、見たままに「ピンポン玉ほどの」と形容している。「似たり」でも、「ごとく」でもなく、「ほどの」としたところがとてもいいなと思った。また中から下への「ニュートンの青林檎」の句またがりが、「ほどの」の表現と相まって、軽快なリズムを作っているのにも感心させられた。
(可 22.07.06.)

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