夏の山逆さに青し田の水面    和泉田 守

夏の山逆さに青し田の水面    和泉田 守

『合評会から』(日経俳句会)

朗 描かれている場面がすーっと入ってくる。気持ちいい。
水牛 面白い風景をうまくとらえている。そのウイットに感心した。
操 田に揺らぐ逆さの夏山。心が安らぐ風景が広がる。
水馬 夏山の影が、まだ稲が生えそろわない田んぼに青く映っているという表現が良いと思います。
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 田圃の水面に映る夏山が逆さまというのは至極当たり前である。しかし、「逆さに青し」という歌い方がとてもいいなと思った。この句を採った人が口を揃えてそう言っている。
 なにしろ17音しか無い窮屈な世界だから、余計なことは言えない。「見たママを詠む」とは言っても、ともすればはみ出してしまう。ぴしりと決まる単語を、いかにうまく配置するか。俳句は「嵌め絵パズル」のようなところがある。定型詩はすべてそうなのだが、最短詩である俳句は特にこの「嵌め込む技術」が求められる。うまく嵌まれば拍手喝采。作者も読者も爽快感を抱く。こうしたゲーム感覚をまとったとろのあるのが俳句という文芸ではないか。そうした点が若い人たちにも受けて、近頃、若い俳句愛好家がぐんと増えているという。
 この句にはそうした趣がある。
(水 22.06.23.)

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