木の芽風ワインを醸す三代目 中村 迷哲
『この一句』
山梨の桃源郷で吟行をした時の句である。なんと十二名の参加者のうち、八名が吟行の最後のイベントであるワイナリー訪問を詠んだ。全員が同じ場所を訪問する吟行において、句材が重なることはままあることであるが、参加者の七割が同じ句材を詠むのは驚きである。それ以上に驚いたのは、ワイナリーを詠んだ八名のうち五名が、このワイナリーの三代目社長を詠んだことである。掲句のほかにも次のような句が並ぶ。
花咲くや三代目はよき醸しびと 水牛
葡萄芽吹くワイン農家は三代目 青水
三代目社長の律儀蔵うらら 三薬
家三代ワインに賭ける蔵の春 木葉
このワイナリーそのものと、隣接する葡萄畑で自ら説明役を買ってくれた三代目社長の印象が如何に強かったかを物語っている。一行の多くは元新聞記者。さすがに次から次へと質問が飛び出す。上等な質問にも、そうでない質問にも、この若い社長は、一つ一つの質問にとても律儀かつ誠実に答えてくれる。筆者は特に「チリの安いワインには正直頭が下がります」という言葉に、ずいぶん出来た人だなあと感心させられた。
実はこの日の幹事の三薬さんは体質的にお酒が飲めない人。それにも拘らず、こんな素敵な機会を作ってくれた幹事に、ただただ感謝するしかない。この後も5月には唯一残る都電に乗って薔薇を愛でる吟行を成功させ、6月には紫陽花吟行を計画している。ついに俳句会の吟行担当幹事に祀り上げられた。
(可 22.06.02.)
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