パソコンにスリープ機能目借時  嵐田 双歩

パソコンにスリープ機能目借時  嵐田 双歩

『季のことば』

 俳句の季語には現代人には意味不明なものが結構ある。「蛙の目借時(かわずのめかりどき)」もその一つで、水牛歳時記によれば「晩春の眠気を催す季節を言う、俳句独特の言葉である。眠くなるのは蛙が人間の目を借りに来るからなのだという民間伝承による」とされる。蛙の交尾期であるため「妻(め)狩る」あるいは「媾離(めか)り」などの説も紹介されている。九音もあるので、目借時と略して詠まれることが多い。
 掲句はこの馴染みのない季語に、現代の神器のひとつであるパソコンを取り合わせる。その意外性と発想力に驚いた。スリープ機能は省電力設定のひとつで、一定時間操作しないとパソコンが一時休止状態となり、画面が暗くなる。完全に電源を落とすシャットダウンとは異なり、マウスを操作すれば休止前の画面がすぐ現れる便利な機能だ。
 作者はデスクトップ型やノート型、スマホなど複数の機器を使いこなすパソコンの達人。春の一日、作業中のパソコン画面がふっと暗くなったのを見て、「(パソコンも)眠気に勝てず寝落ちした」と感じたのではなかろうか。あるいは作者自身がウトウトして、気が付いたらパソコンもスリープしていたという場面も考えられる。まさに取り合わせの妙で、パソコンが何やら意思を持った存在のように思えてくる。一年ほど前の句会には「春眠のパソコン画面謎の文字」(谷川水馬)という句があった。春の日のパソコン作業には眠気が付き物のようだ。
(迷 22.05.05.)

この記事へのコメント

  • 双歩

    そのPCを購入後、1年と1ヶ月。ある朝、スリープしたまま二度と目覚めることなく、お亡くなりになりました。補償期限も過ぎ、高額の修理費を払ったもののデーターは雲散霧消。会報原稿など諸々を出稿し終わったばかりなのが、唯一の救いです。
    みなさんもデーターのバックアップには重々ご留意ください。
    2022年05月06日 10:42