百船の行き交ふ瀬戸や花菜風   中村 迷哲

百船の行き交ふ瀬戸や花菜風   中村 迷哲

『合評会から』(日経俳句会)

朗 春風駘蕩とした瀬戸内の和やかな風景が浮かんできそうな句で、いただきました。
木葉 司馬遼太郎の『菜の花の沖』を連想しました。千石船、五百石船が行き交う瀬戸内に陸地には菜の花が……いい風景です。
てる夫 瀬戸内の風景が目の前に現れて来た。
百子 雰囲気がいいですね。瀬戸内海の百船なら納得がいきます。漁船も観光船も結構多い。
ヲブラダ ジオラマのような海の風景の手前で、菜花が揺れている。
水馬 菜の花が咲き乱れる瀬戸の島々を行き交う船の景が見えてきます。
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 「春の海終日のたりのたりかな」という蕪村の句は、瀬戸内海に面した兵庫県の須磨海岸で詠まれたという。春の句が多いといわれる中でも、ことに有名な作品だ。
 掲句もその系譜に連なるような句で、朗さんのいうように春風駘蕩たるゆったりとした気分が味わえる。穏やかな内海の瀬戸は、大小さまざまな島が点在し、その間を縫って連絡船や漁船などの往来が賑やか。春の瀬戸の海に「百船」を浮かべ、「花菜風」を添えるとは、なんとも心憎い道具立てだ。こういう句には理屈は無用、ただただ描かれた世界に身を委ねるだけで良い。
(双 22.05.01.)

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