火の鳥ぞはばたくように山焼くや 久保道子
『合評会から』(酔吟会)
春陽子 山焼きの炎を火の鳥に見立てているのですね。今日の兼題は「鳥帰る」で、その中に「火の鳥」の句があったので、目立って飛びつきました。
木葉 「火の鳥ぞ」の「ぞ」の強調に惹かれていただきました。
愉里 火の鳥にたとえられて、山焼きの光景がよく見える句だと思いました。
水牛 僕は木葉さんと逆で、「ぞ」と最後の「や」の組合せがよろしくないと思いました。「火の鳥のはばたくように山焼くや」でいいのじゃないかと思いました。
作者 「火の鳥ぞ」と強調したかったのですが、最後「山焼く」で字足らずになってしまい、思わず「山焼くや」にしてしまいました。
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手塚治虫の「火の鳥」を山焼きの光景としてとらえた珍しい句。漫画のなかで不老不死の火の鳥は、己が身で周りを焼き尽くす。秋吉台などの山焼きを見ると、火の鳥とはそんな感じがする直喩である。「はばたくように」という表現も合っている。とはいえ上五の「ぞ」と下五の「や」で賛否が分かれた。上五の終わりは「てにをは」や最強の「や」がふつう。この句の「ぞ」は作者が言うように、火の鳥の強烈なイメージを強調したかったのだが、「ぞ」はたしかに効果的。ただ下五の「や」は着地に失敗した体操選手のようだ。「ぞ」にしたのなら「山を焼く」でよかったのではないだろうか。
(葉 22.03.28.)
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