春きざす金平糖の甘さほど 中嶋 阿猿
『この一句』
金平糖は不思議なお菓子だ。あの独特の形、突起がなぜできるのか、今だに定説がないという。老舗の金平糖専門店のサイトによると、金平糖のレシピはなく作り方は一子相伝の技という。カラフルで愛らしく、口に含むと自然の甘さが広がる。皇室を初め慶祝の引き出物としても使われることが多い。16世紀にポルトガルから伝わり、織田信長も食したといわれ、歴史の古い菓子だ。
そんな金平糖はときおり、俳句にも詠まれてきた。季節はいつでも合いそうだが、可憐で華やか、なんとなくワクワク感もあり、特に春が合いそうだ。掲句もしかり。金平糖に春の兆しを見た作者の感受性は素晴らしい。とはいえ、この句はなかなかに一筋縄ではいかない。金平糖そのものを詠まずに、「甘さほど」と尺度として表現している。省略された言葉を補うと、金平糖の甘さほど(淡くほんのりと)春が兆してききました、と読める。ともあれ句会では、人気を集め堂々の一席に輝いた。
先日、和菓子店で桃の造花をあしらったピンクの金平糖を見つけた。この句の影響もあり、早速買ってきた。そういえば桃の節句が近い。
(双 22.02.22.)
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