冬陽さすステンドグラス亀久橋  向井 愉里

冬陽さすステンドグラス亀久橋  向井 愉里

『この一句』

 深川七福神巡り吟行での一句。もともとこの橋は通る予定ではなかった。毘沙門天の龍光院の次は大黒天の円珠院へ向かう予定であったが、ここまでに七福神以外の芭蕉ゆかりの場所や清澄庭園に立ち寄った為に大幅に時間をロスしていた。予約している魚三酒場に「遅れてもいいか」と問い合わせると、超繁盛店からは「次のお客が入っています」とのつれない答え。義理と人情を秤にかけると、当然ながら人情が重たく、大黒天と福禄寿をすっ飛ばして、冬木弁財天へ真っ直ぐ向かうことにした。その為に、予定にはなかった亀久橋を渡ることになったのである。
 この橋は仙台堀川にかかっている。詠まれている通り、橋の袂の親柱にアールデコ調のステンドグラスが嵌め込まれている。亀の模様だというが、筆者にはどうしてもそうは見えない。橋梁の上部にも同じ細工があるらしいがそれは気付かなかった。いずれにせよ、この一句は、この可愛らしいステンドグラスに目をつけた、作者の観察眼の賜物である。それと、少々口はばったいが、幹事の時間の読みの甘さの賜物である。その証拠に、この句を採ったのは幹事の中の幹事、いわば主犯格の二人である。深川には多くの名橋があり、それぞれ優美さやユニークさを誇っているが、この橋もそのひとつに数えられるだろう。
(可 22.01.20.)

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