冬の日の動物園は尻ばかり    廣田 可升

冬の日の動物園は尻ばかり    廣田 可升

『合評会から』(日経俳句会)

方円 ユーモラスで面白い。
鷹洋 動物たちは日向ぼこで忙しい。がっかりした子ども連れの姿が見えます。
静舟 冬の日だまりの動物たち。観客の向きは尻を見る位置に。ユーモラスな句。
阿猿 動物たちは巣穴にこもりたくなる寒さ。頭隠して尻隠さずが笑える。
道子 確かにあるある風景でほっこりします。
          *         *         *
 「お尻」というのは何とも滑稽な存在だ。ましてや動物の尻ならなおのこと。「肩」とか「脛」ではこの味は出ない。この句を採った人は誰もが「ユーモラス」を口にした。
 作者は、お孫さんを連れて動物園に行ったものの、ゴリラも象もみな淡い冬の日差しの方を向き、観客席からはお尻しか見えなかったという。鷹洋さんの言うように「がっかりした子供連れ」が目に浮かぶ。
 今、上野動物園では事前予約制をとっているので、気軽にふらっとは入れない。何日も前から予約をとって、やっと入った動物園。なのに、見られたのは尻ばかり。孫を喜ばせようとのお爺ちゃんの目論見は、残念ながら外れたようだ。
(双 21.12.30.)

この記事へのコメント