帰らざる人あり日あり年惜しむ  斉山 満智

帰らざる人あり日あり年惜しむ  斉山 満智

『合評会から』(番長喜楽会)

てる夫 「年惜しむ」という季語に対して、「人あり日あり」というのは洒落た表現だなと思っていただきました。
青水 「人あり日あり」と「あり」を重ねた言い回しが、リズムもよくとても上手いなと思いました。
命水 今頃になると賀状を遠慮するという連絡が多くなり、あゝあの人もかと思う事が多いので、そういう気持ちを詠んだ句としていただきました。
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 俳句は自分史、とまで言い切る俳人もいる。俳句にはそういう側面が確かにある。連れ合いを失ったり、病と闘う自身であったり、先人はそれら諸々を短詩に昇華させてきた。小林一茶が50歳を過ぎて、やっと授かった子に次々と死なれ詠んだという「露の世は露の世ながらさりながら」という句は、胸を打つ。
 作者はこれまでも自分の身の回りに起こった様々な辛い出来事を俳句に託してきた。同じ句会では、掲句の他に「近き人次々逝きし年惜しむ」とも詠んだ。詳しくは語らない作者だが、「帰らざる人あり日あり」という十二文字は、深くて重い。
(双 21.12.22.)

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