慣れた事変りゆく事年惜しむ  星川 水兎

慣れた事変りゆく事年惜しむ  星川 水兎

『季のことば』

 「年惜しむ」の季題は難しい。12月句会に投じられた兼題36句のうち、点が入ったのは14句。同様に兼題である「熱燗」は32句中18句だから、どうこう言えないかもしれないが、やはり「年惜しむ」は難しかったとの声が多かった。熱燗という実物をイメージできるのと違い、「年惜しむ」では心情的あるいは心象的風景を詠まねばならない。そこが苦労する理由なのだろうとも思う。そんななか掲句は高点3句のなかの一つであり佳句と認められた。
 一見この句はいつの年にも通じる汎用性を持っているとみるのは間違いではない。物事に慣れたり以前の自分と変わりつつあると感じることなど人生には多い。新入社員が仕事に徐々に慣れて、学生時代の気持ちが様変わりすることなど、その典型例と思える。ともあれ掲句はまさに今年の句として読んだほうがぴったり胸に落ちる。
 コロナ禍に翻弄されるこの2年。この夏の第5波は激烈であった。テレビが日々の感染者数を示したグラフの波の高さを思い起こせばいい。手洗い、マスク、手指消毒、会合会食回避を守りつつ過ごしてきた。ワクチン接種が進んだせいか、なぜか不思議に流行が下火になった。とはいえ多くの人は感染防止策を棄てず、「慣れた事」として日常生活の一部としている。いっぽうでリモート勤務などが広まり、世の「変わりゆく事」を実感しているのだ。これはまさに今年の句である。
(葉 21.12.15.)

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