木枯しに遊ばれ朝のゴミ拾い 大平 睦子
『合評会から』(酔吟会)
鷹洋 毎朝近所のお婆さんがゴミ拾いをしていて、風が吹くとそれを追いかけるので、思わず「危ないよ」と声をかけたことがあります。そんなことを思い出し、実感のある句として採りました。
双歩 木枯らしにもてあそばれているような気もしますが、なにかゆとりのようなものも感じさせてくれる句です。「遊ばれ朝のゴミ拾い」の表現がうまいですね。
てる夫 ゴミ拾いではなく落葉拾いの方がきれいな句になるのになあと思いましたが、よく見る風景をうまく詠んでいます。
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てる夫さんが言われるように、「落葉拾い」の方がきれいで詩的だが、そうすると「木枯し」と重なってしまう。やはり原句の現実的風景を取るべきか。とにかく、この句は木枯しの時期の朝をうまく詠んでいる。作者は実に奇特なお人で、家の近所の道路に散らばるゴミを拾い集めている。それも「善行」をひけらかすことなぞ毛頭なく、ごく自然にやっている姿が「木枯しに遊ばれ」に現れている。双歩さんの指摘するとおりである。紙くずを拾おうと手を伸ばしたら、木枯しがすっと攫っていってしまった。「邪魔しないでよね」なんてつぶやきながら追い駆ける姿が浮かんでくる。
(水 21.12.14.)
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