秋晴れでどら焼き二つ買いました  大平 睦子

秋晴れでどら焼き二つ買いました  大平 睦子

『この一句』

 俳句に馴染んでくると、「や」「かな」の切字を入れ、旧仮名遣いに気をつけて、「見つけた」を「見つけし」などと気取り、五七五の調べに狂いはないか、季重なりは大丈夫か、などなどの約束事を守ることで俳句らしく粧うことに腐心する。作句する以上、ある程度当たり前のことだ。もっとも、あまり形式に囚われると、却って伝えたいことが薄まるという嫌いも生じる。
 掲句はどうだろう。一見、ほとんど散文のようだ。例えば、日記に「掃除も一段落したので外出。家を出ると、あまりの秋晴れで嬉しくなって和菓子屋さんでどら焼きを二つ買いました」と長く書かずに、「秋晴れでどら焼き二つ買いました」と一行で済ませたような雰囲気だ。筆者なら、「秋の晴どら焼き二つ買ひにけり」などともっともらしく詠んだかもしれない。
 ところが、先の月例ではこの句に人気が集まった。しかも、「今回一番気に入りました。素晴らしい」(反平さん)や「ものすごく俳句の上手な人が作った句かも」(定利さん)などと大絶賛。やや舌足らずなあっけらかんとした口語表現に、作者の高揚感が素直に表出され、共感を呼んだのだろう。もっとも、狙ってこういう詠み方をすると、きっとあざとさが見透かされるだろう。天真爛漫な作者にしか詠めない一句だ。
(双 21.10.28.)

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