萩こぼる大川端の翁の像 前島 幻水
『合評会から』(深川芭蕉旧跡吟行句会)
可升 嘱目の句だと思うのですが、短時間の吟行の間に「萩こぼる」という表現を見つけたのは作者の力量だと思いました。まさにそのように萩が乱れ咲いていました。
白山 吟行らしい素直な写生句でした。萩がこぼれるくらい咲いていました。
光迷 夕方になると芭蕉の像が川の見える方に向きを変えるという芭蕉庵史跡展望庭園での所見だろう。かなり散ってしまった白萩、池に花をこぼしている赤萩があった。
幻水(作者) 隅田川と小名木川の交わる角の台地に立つ芭蕉像は、折しも淡い紅紫の萩の花に囲まれていた。芭蕉庵に想いをはせて詠んだ句です。
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「嘱目の句だろう」とか「吟行らしい写生句」という評が出たとおり、一切の修飾語もなくただ見たままを詠んでいる。吟行句はこう作ればいいというお手本でもあろうか。所属する俳句会の晴れての吟行ともなれば、ここはひとつ傑作をと力が入ってしまうのは筆者も功名病を患っているに違いない。萩の花は残り少なであったが、確かに零れ散って芭蕉像を置く展望庭園の小池に浮いていた。この句を見て句会の一座はそれを思い出したはずである。吟行の一行がひとしなみ見聞きしたものを外連味なく詠めば、これぞ吟行句となると筆者は改めて思い知ったことである。
(葉 21.10.25.)
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