ガラス戸に木の葉一枚野分去る 今泉 而云
『合評会から』(日経俳句会)
方円 ペタッとガラス戸に張り付いた木の葉。野分の激しさをうかがわせます。
百子 やっと野分が去ってやれやれと窓を見たら木の葉が一枚。きっと風が強かったのですね。
鷹洋 たった一枚貼りつく木の葉が野分の凄さを物語っている。
雅史 台風で不安な一夜を過ごしたが、翌朝戸を開けると、その痕跡は木の葉一枚だった。被害もなくほっとした気持ちがうかがえます。
定利 被害は大したことなかったか。昔、こんな景色見た事があります。
水馬 どこかで見たことのある風景だと思いました。きっと子どもの頃の実家の風景ですかね。
明生 国語の教科書で、重病の子が窓の外の木の枝に一枚だけ葉っぱが落ちずに残っているのを見て、生きる勇気をもらった。そんな内容の話が載っていたのを想い出しました。
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採った人の選評を見てのとおり、ガラス戸に貼りついた一枚の木の葉に、野分後の安堵感や周辺の状況などの諸々を語らせ、高点句となった。作句の心得として「焦点を絞る」というのがある。無駄なことは言わず、木の葉一枚に絞った潔さ。さらに、「モノに託す」という俳句らしい表現の上でも参考になる。実作上、いろいろと見習いたい一句だ。
(双 21.10.11.)
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