野分晴海の上ゆくモノレール 星川 水兎
『合評会から』(日経俳句会)
明古 野分晴の、眩しい空と海の間を走るモノレールに乗っている。気分も爽快だろう。
芳之 青い空と海をバックに走るモノレールが誇らしげに感じられます。
守 台風一過の青い空が目に浮かびます。
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海に囲まれ島も多い日本だから、海上モノレールは各地にあるのだろうが、句を見た途端私の脳裏には東京モノレールが浮かんだ。昭和39年(1964年)9月、東京オリンピックで外国人客が押し寄せるのを当て込み、浜松町駅と羽田空港を結ぶ日本初の本格的モノレールが開通した。当時、航空担当記者として羽田通いをしていたから、試乗会に始まって、このモノレールにはお世話になった。
しかし、オリンピック開催前後こそ大賑わいだったこのモノレールも、その後はガラガラになってしまった。2両連結の車両に乗客は私一人ということもあった。浜松町から羽田まで片道250円という高額乗車賃がネックになったのだ。JR(当時は国電)の初乗り運賃が20円、タクシーが100円、ラーメンが50円の時代である。一時はあわや倒産と言われたが何とか持ち直し、今では隆盛を誇っている。
浜松町を出発するとまもなく左手に海が見える。視界がぱっと開けて、野分晴れの朝などまことに気持がいい。この句は身も心も晴れ晴れの気分をストレートに詠んでいる。
(水 21.10.03.)
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