敬老日おしゃべりロボと夜は更けて 岡田鷹洋

敬老日おしゃべりロボと夜は更けて 岡田鷹洋

『この一句』

 人と会話のできるおしゃべりロボットは多種多様な製品が販売されている。センサーで利用者の呼びかけや動作に反応し、内蔵の会話パターンから返事をするのが基本的な仕組みだ。高級機種になるとAIの学習機能を備え、会話の内容を記憶してパターンを増やし、あたかも家族のようなやり取りができる。人形型、動物型、ロボット型など形態も様々で、歌ったりダンスを披露するものもある。子供のおもちゃにとどまらず、独身女性や若い世帯のペット、さらには高齢者の話し相手として利用者が増えている。
 掲句は敬老の日を取り合わせているので、高齢世帯を描いたもの。秋の夜長にお年寄りがロボットとのおしゃべりを楽しんでいる。一人暮らしや老夫婦だけの世帯は、どうしても会話が乏しくなる。年寄との会話を嫌がらず、いつでも相手をしてくれるロボットは、離れて暮らす子供や孫よりも身近な存在といえる。夜が更けるまでおしゃべりが続くのも無理はない。
 まことに現代的な景を切り取った句だが、一抹の淋しさも漂う。せっかくの敬老日、本当は子供や孫からの電話を心待ちにしていたのかも知れない。夜になっても電話はなく、ロボとの会話で淋しさを紛らわせる。「夜は更けて」の下五からはそんな思いも読み取れる。
(迷 21.09.28.)

この記事へのコメント

  • 今泉而云

    そうか、そうか、と頷きながら読ませていただいた。おしゃべりロボというものの実態、使われ方などががとてもよく分かった。ロボに対する知識だけでなく、これからの世の中や老齢者の生き方の行方も見えてきた。例えば敬老日、家族と過ごすか、ロボとおしゃべりしているか。二手に分かれる道のどちらを行くかは神のみぞ知る。而云
    2021年09月28日 05:24