瓜棚のすがれて釣瓶落しかな 大澤 水牛
『季のことば』
「釣瓶落し」とは、夏が終わり、秋の日暮れが急に早くなったことを、あたかも井戸に釣瓶を落としたときのようだと喩えた言葉で、秋の季語だ。子供のころ、学校から帰って遊びに出ようとすると、「秋の日は釣瓶落し、といって直ぐに暗くなるから、早く帰るんだよ」とよく親に言われたものだ。釣瓶(つるべ)を知らない今の若い人にはピンとこない言葉だろう。
「すがれる」は、馴染みの薄い日本語だ。漢字を当てると「尽れる・末枯る」で草木が盛りを過ぎて枯れ始めること、と辞書にある。一方、晩秋の季語に「末枯(うらがれ)」があり、意味する内容は同じだ。
掲句は、日が短くなって何となくうらさびしい夕暮れ時、最盛期を過ぎ枯れ始めた瓜棚を眺めながらため息を一つ、というような情景だ。「釣瓶落し」の本意に呼応するかのようなすがれた風情を配し、秋特有の寂寥感を醸し出した。句会では共感者が続出、最高点で一席に輝いた。
ちなみに、「瓜」はウリ科の総称で西瓜や胡瓜、糸瓜も含まれるが、狭義には甜瓜を指し晩夏の季語。この句では、瓜の季の働きもすがれている。
(双 21.09.21.)
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