夕刻のコロナの数字秋暑し    高石 昌魚

夕刻のコロナの数字秋暑し    高石 昌魚

『この一句』

 高齢者のワクチン接種が8割方終わり、やれ安心と思っていたら、今度は若者と働き盛り世代の感染者・重症者が激増した。死者も著増し、即入院がかなわない自宅やホテル療養者が日ごとに増え不安はまさるばかりである。一部には「制御不能、災害レベル」と専門家のコメントも出る始末。ほんとうにコロナ禍の終焉が見えない現況である。
 ところで、以前は午後3時に東京都の直近感染者数を発表していた。それが5月末からは夕方5時前の発表となっている。理由は感染者の激増により集計に時間がかかるせいなのか、あるいはなんらかの思惑があるのかよく分からない。いずれにしても昼下がりの発表から、夕方のあの嫌なピンポン音がテレビから流れるようになった。
 子どもの医療関係に長年携わってきた医師の作者は、人一倍このコロナ禍を憂慮されているに違いない。国民全体も毎日毎日の感染増にうんざりしている。そのへんのうんざり感を「夕刻のコロナの数字」と平板的な言い回しで詠んでいる。それが「秋暑し」という情感のある下五につながって、なるほど今年はことに暑い秋だと思わせる。
 余談ながら、この句をキーボードに打ったら最初に「憂国のコロナの数字」と画面に出てきた。パソコンも現状を嘆いているようで思わず苦笑したことだ。(葉 21.09.10.)

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