踊り手の手先揃ひて輪が動き 宇野木 敦子
『季のことば』
我が家に近い杉並・高円寺で行われる「阿波踊り」が中止になったという。それ自体は「ちょっと残念」ほどのものだが、事情通の次の言葉に「オヤ」と思った。「今年は高円寺駅近くの劇場で入場料を取り、公演する」のだという。コロナは世の中を大きく揺さぶり、盆踊りも劇場型へ。各地の風物・盆踊りにも大きな変化が起きているはずだ。
掲句の「手先揃ひて」を見て、阿波踊りもそうだった、と思った。しかしそれは踊りの始まる前の一瞬のこと。踊りは輪にならず、長い行列が駅前商店街の道路を練り歩く。笛や鉦やらのお囃子が相当な迫力を持って鳴り続ける。列に従って何度か雑踏の中を歩いてみたが、そんな夜は床に行っても、お囃子の音が耳の奥に残っていた。
俳句の季語の「踊り」(秋の季語)は「盆踊り」を意味し、夏の盛りから秋口と言えるような時期の風物として多くの人に親しまれている。夕方になれば風に乗って、遠くのお囃子の音が聞こえてくる。子供たちはまだ夏休みのうち。踊りの列に加わっていた学童たちのことをふと、思う。彼らに今年、どんな秋が訪れるのだろうか。
(恂 21.09.05.)
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