三伏にオクラの伸びのためらわず 澤井二堂
『合評会から』(日経俳句会)
芳之 ぐんぐん大きくなるオクラ。暑さに負けぬ力強い生命力を感じる。
三代 オクラは一日でぎょっとするくらい大きくなる。実感だと思います。
方円 真夏の植物の生命力を、この句は具体的に示した。「ためらわず」が良い。
ゆり ためらわずが本当にその通り。採り時を逃すと、すぐに太く大きくなって、もう食べられない。オクラにとっては知ったこっちゃないですよね。
実千代 ためらわずにすくすくのびるオクラ……。三伏の季語にぴったりです。
雀九 酷暑なれど庭先あるいはプランターのオクラがたくましく清々しいことよ。
* * *
作者はベランダでオクラを栽培している。「採ってもとっても実の生る元気な様子を『伸びのためらわず』とした」という。まさにその通り。
生らしっぱなしにしておくと、オクラは20センチにもなり、莢がかちかちになってやがて黒褐色になる。中には黒い正露丸のような実が並んでいる。これをフライパンで煎り、摺り鉢に入れてこつこつと気長に砕いたものをコーヒーメーカーに入れれば、一風変わったコーヒーができる。今どきそんな馬鹿らしいことやる人、いないよね。戦時中、コーヒー豆が入手不可能となって悄気げていたコーヒー狂いの友人のために、亡父がせっせと拵えてやっていたのを憶えている。
(水 21.08.08.)
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