初めての家庭菜園花胡瓜     池内 的中

初めての家庭菜園花胡瓜     池内 的中

『季のことば』

 「花胡瓜」というのは、花を付けたまま可愛い実を成らせた胡瓜のことで、初夏の季語である。六月になり七月になっても相変わらず胡瓜は次々に花を咲かせ秋になるまで続くのだが、五月に初めて咲いたときの印象が実に感激的なので初夏の季語になった。
「花つき胡瓜」あるいは「花丸胡瓜」とも呼ばれ、日本料理の前菜や刺身のツマとしてよく登場する。ほんとにちびっこい2、3センチの緑色の胡瓜の先に鮮やかな黄色の花がついていて、演出効果満点なのでよく用いられる。
 この句の「花胡瓜」は懐石膳ではなく、実際の菜園で生きている花胡瓜だ。作者は一念発起、家庭菜園を始めたのだろう。どこの家も大概は庭を耕してみると気づくのだが、土が固く締まり、石ころが意外に多いものだ。これを丁寧に拾い捨てながら土塊を崩し、園芸店で買い求めた堆肥などを入れて菜園の基礎を作る。そこに胡瓜の苗を植える。
最初はいかにも貧弱なひょろひょろ苗で、果たしてこれが実を結ぶのかと案じていたら、いつの間にか伸びてきて、支柱を立ててやるとそれに蔓を絡ませ、さらに伸びて、可愛らしい黄色の小花を咲かせた。その花の元にはなんとちっちゃな胡瓜が出来ているではないか。このワクワク感が「花胡瓜」の一語に生き生きと現れている。
(水 21.07.27.)

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